ごあいさつ
「研究の研に、美しいで、『研美』です。」
お店の方に、領収書の漢字を説明する私の言葉に、父は憮然とした表情で、
「美を研ぎ澄ます、で『研美』だ。」
そうなんだ。でも、研ぐと言われて、この字が浮かぶ人は少ないでしょう。父の思いなのか、祖父の意図したことなのかはわからないけれど、美を研究するのではなく、美を研ぎ澄ます会、それが『研美会』なのです。
研美会は、二代家元光雲先生からいただいた『百翠軒』を軒号としています。『百もの翠を集める』。沢山の翠=宝物、宝物は人、素敵な人たちが集う所でありたいと願っています。
いけばなは、花を飾ることを通して、暮らしに彩りをあたえ、人を癒してくれることはもちろんですが、そればかりではありません。花がそこにあるという結果ではなく、花をいけるという行為としての魅力も大きいものです。
花と対峙する時を持つ。花をとおして、自然、生命をみつめる。自分自身をみつめることの大切さ。花をいける、花を生かすは、自分を生かすことに通じます。
生命あるものに、はさみを入れ、形をあたえる。
1杯の花をいけるためには、小さな決断をいっぱいします。決断するためには、出来上がりを想像する力も、そこまでの段取りを考える力も必要です。花への感受性、思ったものを形にできる技術。研ぎ澄まされたところに美は存在するのでしょう。研美会の教室が、いけばなを学ぶ上で、楽しい環境であることを願っています。